変形性関節症について

変形性関節症(OA:Osteoarthritis)は、関節軟骨の摩耗や破壊によって関節機能が低下し、痛みや運動障害を引き起こす疾患です。特に中高年に多く見られ、膝や股関節に起きやすいのが特徴です。本コラムでは、変形性関節症の疫学や治療法について、患者さんに知っていただきたいポイントを詳しく解説します。

変形性関節症の疫学

変形性関節症は、日本では特に膝関節に起こるケースが多く、厚生労働省の調査によると、膝の変形性関節症の潜在患者数は約3,000万人と推定されています。そのうち、実際に症状が現れて治療が必要な方は約1,000万人にのぼるとされています。

 

性別では女性に多く発症し、特に閉経後の女性がリスクが高いことが知られています。これは、ホルモンバランスの変化が関節や骨の健康に影響を与えるためと考えられています。また、肥満は変形性関節症の重要な危険因子です。体重が増えることで関節への負担が増え、軟骨の摩耗が進みやすくなるためです。

 

高齢化社会の進行に伴い、変形性関節症の患者数は今後さらに増加すると予想されます。これにより、関節の健康を守るための予防や早期治療の重要性がますます高まっています。

 

1.リハビリテーション

変形性関節症の治療において、リハビリテーションは最も重要な柱の一つです。関節を支える筋力の強化や適切な身体の使い方を学ぶことで、関節への負担を減らし、症状の進行を抑えることが期待できます。

リハビリの内容は、患者さん一人ひとりの症状や生活環境に応じて異なります。例えば、膝関節症の場合、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える運動や、関節の可動域を広げるストレッチが行われることが多いです。また、正しい歩き方や姿勢を習得することも重要です。専門の理学療法士の指導のもと、安全に進めることが推奨されます。

さらに、リハビリは継続が鍵です。短期間で効果を感じることもありますが、長期的に取り組むことで関節の安定性を高め、痛みの軽減や機能改善を実現できます。日常生活での工夫も取り入れながら、無理なく続けることが大切です。

 

2.注射療法

注射療法は、リハビリや薬物療法などと組み合わせて行うことが多い治療法です。症状の程度や原因に応じて、以下のような注射が選択されます。

a.関節内注射

関節内注射は、直接関節の中に薬剤を注入する方法です。主にヒアルロン酸を使用し、関節内の滑りを良くすることで痛みを軽減します。ヒアルロン酸は人体にもともと存在する物質で、関節内の潤滑油のような役割を果たします。

疼痛が強い場合には、ステロイドや局所麻酔薬を併用することがあります。これにより、炎症を抑え、短期間で痛みを和らげることが可能です。ただし、これらの注射は頻繁に行うことができないため、適切なタイミングで使用することが重要です。

b.関節外注射

膝関節の痛みの原因が、必ずしも関節そのものにあるとは限りません。周囲の筋肉や腱、靭帯の緊張や炎症が関与している場合があります。このような場合、関節外注射が有効です。

特に「ハイドロリリース」という技術が注目されています。これは、生理食塩水を筋肉や腱の周囲に注射することで、癒着や緊張を緩め、関節の動きを良くする治療法です。膝関節だけでなく、股関節や腰の痛みにも応用されることがあります。

c.PRP(多血小板血漿)療法

PRP療法は、自由診療の分野に属する再生医療の一種です。患者さん自身の血液を採取し、そこから血小板を濃縮した液体を関節内に注入します。血小板には組織の修復や炎症を抑える作用があり、これにより痛みの改善や関節機能の向上が期待されます。

この治療は特に進行が軽度から中等度の方に適しており、関節の負担を減らしながら自然治癒力を活かす方法として注目されています。副作用が少なく、ステロイドやヒアルロン酸に比べて効果があるとする研究が多くあります。ただし、保険適用外であるため、治療の費用については事前に医師と相談する必要があります。(PRPの詳細はこちら

 

3.薬物療法

薬物療法は、変形性関節症の痛みを和らげるために重要な治療法です。特にリハビリや注射療法の効果が出るまでの間、痛みをコントロールする目的で使用されることが多いです。

薬の種類としては、以下のものがあります:

貼り薬や塗り薬

局所的に痛みを緩和するために使用します。副作用が少なく、軽度の痛みに適しています。

飲み薬(鎮痛薬)

痛みが強い場合には、内服薬を使用します。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が一般的で、炎症を抑えながら痛みを軽減します。

漢方薬

症状や体質によっては、漢方薬を取り入れることもあります。体全体のバランスを整えながら症状を改善するアプローチです。

薬物療法は、症状に応じて使い分けることが重要です。医師と相談しながら、自分に合った方法を見つけていきましょう。

 

4.装具療法

装具療法は、関節への負担を軽減し、痛みを和らげるために用いられます。特にオーダーメイドの靴の中敷き(インソール)は、膝や足の変形を補正し、歩行時のストレスを軽減する効果があります。

保険適用で作成できる場合もあり、初期費用は約4万円ですが、保険の負担割合に応じて払い戻しを受けることが可能です(例:1割負担の場合は約4,000円)。そのため、費用面での負担も比較的軽減されます。

また、膝サポーターや足底板など、症状に応じた装具を組み合わせることで、より効果的な治療が可能です。これらの装具は、日常生活の中で簡単に利用できるため、取り入れやすい治療法の一つです。

 

5.手術療法

上記の治療法を試しても改善が見られない場合、手術が選択肢となります。代表的な手術としては以下のようなものがあります:

人工関節置換術

痛みの原因となる変形した関節を人工関節に置き換える手術です。特に進行した関節症において、痛みの解消と運動機能の回復が期待できます。

骨切り術

関節の変形を矯正し、負担を分散させる手術です。比較的若い患者さんや、人工関節置換術に至らない場合に適しています。

手術は負担が大きい治療法ではありますが、適切に行われれば劇的な改善が見られることも少なくありません。手術後のリハビリも重要で、術後の回復をサポートします。

 

おわりに

変形性関節症は、適切な治療を行うことで症状を和らげ、生活の質を向上させることができます。リハビリテーションや注射療法、装具療法、薬物療法、そして手術療法と、治療の選択肢は多岐にわたります。患者さん自身の症状や生活スタイルに合わせた最適な治療法を見つけるために、ぜひ専門医にご相談ください。

変形性関節症と向き合いながら、より快適な日常生活を取り戻すお手伝いができれば幸いです。

 

副院長 富岡 義仁

 

リオクリニックは2024年川崎市多摩区生田に開院いたしました整形外科クリニックです。

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